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(25)

 
 だが。

 扉を開けたのは、ルリナ姫たちが期待していた人物と違っていた。

 

 

「ルリナ様、御国王付き第一等武官、ラギヤにございます。正式な手順も踏まず参上しましたこと、お許しください」

 慇懃な態度で頭をたれたのはアルド王子同様、背が高くがっちりとした体つきの武官であった。

「お父上の命により参りました……お人払いを願います」

 そういうとバーサをじろりと見た。

「お前が来ましたか……」

 小さな声でつぶやくとルリナ姫は穏やかに立ち上がり目を伏せてダリに退出を促す。

 ダリはかすかにうなずいて、専属医師タイラを残し、バーサと二人で席をはずした。

 

 

「申し訳ございません、バーサ様」

 急なことにダリは頭を下げている。

「気にしないでください。ルリナ様は一国の王女様なのですから」

 バーサはダリの顔を見て微笑むと、扉へ向かった。

「では、私は王子にご挨拶をしてきます」

 

 眠っていたのは3日間だったにもかかわらず、まるで遠方から帰ってきたような不思議な感触。

 城内に妙な騒がしさを感じるのはそのせいだろうか、そんなことを思いながらバーサは足をすすめた。

 

「バーサ先生!」

 石畳の廊下に差し掛かったとき、うしろから靴音を響かせて近寄ってきたのはアルド王子専属の兵士ルカ

である。毎回バーサを呼び出すときにその指示を与えられるのが彼であった。

「バーサ先生、一体どこにいらしたのです。探しました」

「ああ」

 ルカの勢いに負けてバーサは思わず苦笑いした。 

「すみません、ちょっと用があって」

「お願いですから城にこられない時は私にも言っておいてください」

 ルカの必死な様子に、

「あの、何かあったのですか」 バーサはこう聞かないわけにはいかなかった。

 彼は大きくため息をつくと。

「アルド王子です」

 その回答の意味がわからずバーサは首をかしげた。

「演習が厳しくて、というか、その、恐ろしく冷酷というか、なんていうか、もう、まるでダルダ山の頂上のようです」

「ダルダ山?」

「あそこは氷の山ですから」 そう言って今度は肩をすくめる。

「とにかく王子のところへお連れします」

 

 

 バーサが控えの間につくやいなや正面の扉が勢いよく開き、アルド王子が姿を見せた。

「バーサか」 

 とっさに平伏してバーサが答える。

「はい」

 アルド王子は目を見開いてうれしそうな表情をうかべたが、すぐに眉をひそめた。



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2007/7/30 update

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