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  卓に言われた通りのことをいうと、4人は互いの顔を見合わせてにやにや笑いながらついてきた。

 

林に入るとすぐ、

「おい、ズル休みしていいと思ってんのかよ」

そういってボクはうしろから突き飛ばされた。

なにか言い返したかったけど本当にズル休みしていたからボクは何も言えずにうつむいた。

 

「金魚すくいなんかしちゃってさ」

 ボクの手から金魚の入った袋を取り上げる。

「かえせ」

「おーっと」

 金魚が入っているのにこいつら袋を投げあいっこしている。

「やめろ」 ボクは一人に飛びついた。

「水がなくなったら死んじゃうだろ、やめろー」

すると2人がかりでボクを押さえつけ、他の2人が

 

「あ、そうか。死んじゃうのかぁ」

そういった後。

地面に向けて袋をひっくり返した。

 

「ああっ」

 3匹の金魚は地面にたたきつけられて跳ねている。 この近くに水はないし、水道の水じゃ駄目だ。

そう思っているうちに、

 金魚は口をパクパクさせてからだをひねると、すぐに3匹とも動かなくなった。

 

「はなせ、はなせ、はなせよっ!」

 

 金魚、卓と一緒にとった金魚が……。

 

 そのとき卓の声が聞こえた。

 

「お前たち、『死ぬ』ってのがどういうことか勉強したほうがいいな」

 

 あれ、ボクの横にいたはずなのに卓はどうしてそんなところにいるんだろう。

 

「直人、こっちにこい」

 

 卓がそういうと、ボクをつかまえていた2人は驚いたように

「お、お前だれだ。どっから出てきたんだ?」 卓に向かってそう言った。

 他の2人も驚きをかくさず目を見開いている。

 その隙にボクはやつらの手をすり抜けて卓のところへ走る。

「直人」

 卓の差し出した手に飛びつくと、彼はボクの頭を抱え込むようにして自分の胸に押し付けた。

「た、卓?」

「お前はじっとしてろ」

 卓はそういって4人をにらみつけると、

 

「……お前たちに見せてやるよ。『死ぬ』ってのが何なのかさ」

 

 神社の林の周りはお祭りのちょうちんがぶら下がっていた。

 ゴオッ、と風が吹いて、それらがいっせいに点滅しだす。

 

「おい、あれなんだ」

4人の声が聞こえる。

 

「う、うわああああ」

「なんだよあれ」

 

 卓がボクの頭を抱え込んでいるのでボクには何が起こっているのかさっぱり分からない。

 

 それでもこっそりあいつらの様子を伺うと、

 

 4人ともボクと卓の後ろの方をみて震えている、そしてしまいには腰が抜けたようになってしりもちをついたまま

動けなくなっていたり、倒れて吐いてるヤツがいる。

 すると中の1人がなんとか体をおこして逃げようとした。

 

「だめだ。しっかり見るんだ」

 

 卓が低い声でそう言うと4人とも雷に打たれたようびくりとして、またボク達の後ろを見つめていた。

 

「卓、卓、何がおこってるの。あいつら何みてんの、ねえ」

 ボクがもぞもぞうごくと、卓はボクをさらにきつく抱き込んだ。

 

「いいんだ。お前は分かってるからいいんだ」

 

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2005/7/18  update

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