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 学校を休んで3日目。
 

 先生に「熱がさがらない」と電話したら、とっても心配してくれてそれがちょっと意外だった。

 ボクのことなんとも思ってないワケじゃないんだ。

 明日は学校に行ってみようか。でも、でも……。

 行ったらあいつらがいるし。 ボクもうお金ないよ。
 

 そう考えたとたんに胸とお腹の間がぎゅんと締め付けられた。

 

 

 

「ああ、これだ。本当に馬鹿だなボクって」

『さきだつ不幸』……じゃなくて『さきだつ不孝』か。ええっと、『親不孝する』ってこと。

 なにが誤字か分からなかったから久々に辞書ひいちゃったよ。

 

『親不孝』

 そっか先に死んじゃうんだもんな。

 やっぱり目いっぱいごめんなさいってノートに書かなくちゃ。

 そう思いながらお父さんとお母さんに渡す手紙を書くようにノートを埋めていく。 するとだんだん自分が

小さかったころのことを思い出してきた。あれもこれも、いっぱい謝りたいことがある。

 

 お母さんが仕事にいけないように朝わざとお漏らしした幼稚園のころの事とか。

 ランドセルをボードがわりにして土手をすべったらぼろぼろにしちゃったこととか。

 父の日も母の日も肩たたき券しかあげたことなかったな、とか。

 あと、

 この間お父さんが大切にしている秘密のビデオをお母さんに渡しちゃったこととか。

 

 なんかくだらないことばっかだなぁ。

 まあ、全部ひっくるめてごめんなさいでしめくくってボクはまた神社へとでかけた。

 

「今日は遅かったな」

 林に着くともう卓が来ていた。

「ごめん、書いてたらなんかノッてきちゃって。とにかくお父さんとお母さんにはあやまらなくちゃって思って」

 そういいながらまた卓にノートを渡す。

 

 「へえ、今回はずいぶん書いてきたな。よし」

そういって卓はしばらくノートに見入っていた。

 「誤字、分かったよ。ちゃんと直してきた」ボクがそういうと

 ぶふっ。

卓が急にふきだすからびっくりしてしまった。

「どうしたの」

あわてて聞くと

「お前さ、俺ネタ書けって言ったわけじゃないんだぞ」

 そういってげらげら笑っている。

「なんだよ、ボク本気で一生懸命書いてきたのに」

「わりい、わりい、だってさあ、いったい何のビデオだよ〜」

 わらっている卓の顔をみていたら、なんか本当におかしいこと書いたように思えてきて最後はやっぱりボクも

一緒に大笑い。 なんか卓といるといつも笑っている気がする。

 

「なあ、卓」

「うん」 

「ボクさあ、なんかぜんぜんすごいことしてなくて、まじめに遺書書こうとしても結局こんな感じでさ。

簡単に死にたいと思うだけあってなんかいいかげんだよね」

 すると卓はまじめな顔をしてボクをじっとみつめると。

「原因はさ、こいつらだろ」

「そうかもしれないけど、やっぱり……ボクはボクが一番いやだ」

 

「俺もさ、自分にうんざりしちゃうようなことしたよ。それとさ父さんに謝りたかったな。買ってもらったばっかりの

スニーカー、すぐ使えなくしちゃって」

 すこし寂しそうに卓が言う。

「スニーカーって今はいてるそれ? かっこいいじゃん」

「ん、まあな」

 

 ボクたちは薄暗い林の中でいろいろな話をした。

 

帰り際、「明日はドラゴンボールの単行本もってくるよ」って言ったら、卓はすごくうれしそうな顔をしてうなずいた。 

 

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2005/7/9  update

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