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(11)
「バーサ、詳しいことは後で聞くが……」
ルリナ姫たちは部屋へと戻り、酔った兵士達は牢屋へと入れられた後のことである。
サガ宰相とバーサが控えの間に残っていた。
「はい、今回の件について王子にもお話を聞いていただきたいのですが、後日お時間をいただけますか」
「わかった。後で王子に話を通しておこう、その前にバーサ」
先ほどからそわそわしている宰相をみてバーサは首をかしげた。
「はい」
サガ宰相はかるく咳払いをすると、
「少し前に王族の挨拶が終わったようだ。そのことは知ってるな」
「はい、毎年祭りの際には特設のバルコニーでご挨拶されると聞いています」
彼が何を言いたいのかいまひとつつかめずバーサは宰相の次の言葉を待った。
「王子が戻る前に着替えたほうがいいな」
「いけない、うっかりしていました。そうですね、下がります」
ごたごたしていた為にバーサは借りものの衣装を着たままである。
「ああ、できるだけ急ぐように」
こうして追い立てられるようにバーサが部屋から出ようとしたとき、
「サガ、ルリナが見つかったそうだな」
突然上手の扉が開いてアルド王子が入ってきた。
サガ宰相はとっさに背中でバーサを隠すようにして、「お前は下がりなさい」。と小声で言うと王子のほうに向き
直った。
そして「ルリナ姫はご無事でした。いま部屋で休んでおられます」。そう言って丁寧に頭を下げる。
バーサも頭を下げてそそくさと下手の扉へと向かうと。
「お前は誰だ」
後ろから王子の声が響いてバーサは思わず首をすくめた。
「王子、そのものは用が済んで今下がらせるところです」
サガ宰相がそう声をかけたが王子はまるで聞こえないかのようにずかずか歩いてきてバーサを手をとった。
そのはずみでバーサの顔を隠していた衣装がはだけてしまう。
「やはりバーサか」
「も、申し訳ありません。すぐに替えます、えっと、違った。あの、帰ります。後でこのことについてお話……」
バーサがそこまで言うとアルド王子は大声で笑い出した。
「はははは、その衣装はお前には大きすぎるな。でも愛らしいぞ、バーサ」
「愛らしいって、王子、これには色々と物語が……(←「事情が」と言いたかったらしい)」
王子は笑ったまま
「そうか。物語があるなら今聞こう。行くぞ」
そういって祭りの衣装のままのバーサを引っ張っていこうとする。
「王子、王子、あの、服を変えてきます。この衣装では歩きにくくて」
するとアルド王子はじっとバーサを見つめると、
「うむ、確かにな。ではこれをかしてやる」
王子は自分の白い腰布を解くとそれをそのままバーサの腰に巻きつけた。
「どうだ。これなら引きずらないだろう」
「ええっと」。バーサが困ってサガ宰相に救いを求めるように視線を投げると、宰相は顔をしかめていた。
そして首をふって、まるでこう言っているように見えた。
「だから早く下がれといったのに。あきらめなさい」