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 携帯電話をながめて溜息をつく。

「やべぇよな。やっぱ」

 ってか考え込まずに『アレは前の彼女だから』とか、いや、説明めんどくさいから『かるーく友達?』とか。

 なんかさっさとメールしちゃえばよかったのに何やってるんだ俺は。

 

 彰と最後に会ってからもう2週間が過ぎた。そしてその間、彰からも電話もメールもない。

 俺はもう一度溜息を付いてから携帯電話を放り出した。

「だいたいさ、いくら広くても大学でも全然見かけないってのはどうよ」

 ぶつぶつと独り言を言う俺の前には構内レストランの一番人気メニューAランチセット。食べてやる、と

思ってオーダーしたのに全然手をつけられない。

 

「よーっ、お前がいてよかった。やっぱこの時間のレストランは混んでるよな、前座るぞ」

 その声に顔を上げると、『ボリュームBランチセット・デザートつき』のプレートを抱えた吉岡が前の席に

どっかりと座り込んだ。

「よお……」

 俺が返事をすると、

「何、お前元気ないじゃん。なに、やっぱダーリンと喧嘩したのか」

 さっさとBランチに手をつけて口をもぐもぐさせながら言う。

 ダーリンて誰だよ、ダーリンて。

「『やっぱり』、って何だよ」

「んー、だってさ、お前のダーリンはフランスに帰るんだろう」

 は?

「2、3日前だったかな購買にレポート用紙買いに行ったらお前のダーリンがいて」

「だからダーリンって誰だっ、……ってまさか彰のことか」

 すると吉岡はプレートのポテトを口に放り込みながら、

「お前のダーリンつって他に誰がいるんだよ」 などとのたまう。

 どういうことだ? フランス、まさか帰る?

「お、俺、何にも聞いてない」

「え、そうなのか。一応俺も顔見知りだから声かけたんだよ、そしたらすぐにフランスに帰るからとか何とか」

 大事なとこなんだからきちんと聞いておいてくれよ。

「で、なんか庶務で休学だか停学だか退学だか手続きしたとかなんとか」

 何ぃっーーー。この馬鹿野郎、それぞれ意味が違うじゃないか。

 慌てて席を立つ。

「お、お前、ランチ食わないのか」

「それ、お前にやる」

 そう言うと俺はレストランを飛び出した。

 冗談じゃない、聞いてない、俺が聞いてないのに何でこんな大事なことを吉岡から聞かなくちゃいけないんだよ。

 走りながら携帯電話を取り出して彰の番号をプッシュする。

『オカケニナッタ電話番号ハ、電源ヲキッテオラレルカ、電波ノ届カナイ……』

 ちっ、電源切ってるのかよ。

 

 

 結局、あれから何度電話してもつながらない。講義が全部終わった後電話してもやっぱり電源は切られたまま。

 あーつながらない。ちくしょう。

 何でだよ、コールもならない。

「まさか、もう解約したとか。いや、それならメッセージ違うはずだし」

 しかたなくメールしてみた。すぐに着信しなくても電源入れてからチェックできるし。

「タイトル『よお』メッセージ『夜でもいいから電話くれ』」

 送信して一晩中待っていたけれど。

 結局、彰から電話はなかった。
 

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次回で完結となります。明日更新予定♪

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2006/7/19  update

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