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  翌朝の俺は目はしょぼしょぼ、食欲もなくてふらふら。

 でも朝一番の講義を受けなくちゃいけない。うう、行かなくちゃな。

 

 

 なんてまじめな学生らしい理由で来たはずなのに大学の門をくぐったらなぜか講義をそっちのけ。

 そのまま屋上へと直行してしまった。

「ふーっ」

 そしていつものごとく青空を見ながらタバコを吸う。

 

 『ライターあるよ』

 一番最初に彰に会ったときの言葉。

 それから面倒ばっかりかけたっけ。いつもニコニコしてていつもやさしくて、電話すれば必ずワンコールで出て

くれた。

「ふっ、笑っちゃうよ」 思わず一人ごちる。

「これでさー、アイツの家なんか押しかけちゃって、フランス行きのフライトなんか調べちゃったりしてさ、

今日だ! 急げば間に合うかも、なんつって腕振って走って空港行ってお目目キラキラ、感動の再会ってか。

くだらねえ、少女マンガみたいだよな、そんなの」

 

 ……電話かかってこねえし。

 フェンスを背に座り込んてもう一度携帯の画面を覗き込む。

「もう一度……かけてみるか」

 タバコの火を消して、彰の番号をプッシュした。

ツルルルル……

 呼び出し音がなる。

 でない、いつもワンコールで出てくれていたのに。やっぱり出ない。何度も何度もかけたのに、メールしても

電話くれないなんて。

「やっぱもうフランス帰ったのかな」

あきらめて電話を切ろうとしたその時。

 

「ケイ、やっぱりここだったんだ」

 屋上へのドアを開けて携帯を手にした彰が歩いてきた。

 電話を切るのなんか忘れて俺の目は彰に釘付けになる。

 髪をさらさらさせちゃってさ、ニコニコして手なんか振ってきやがって。

「電話とれよ! 俺、俺、何度も電話したじゃんか」

「うん、ゴメンね。昨日はずっと地下にもぐっててね。メールは今朝気がついたんだ」

「なら、メ、メールとかで返事くれればいいじゃんか」

 そばによってきた彰が首をかしげる。

「お、おパリに帰ったんじゃなかったのかよ」

「ケイ? どうしたの」

 言われて気がついた。

 ぎゃーーーーっ、俺ってばおめめうるうるーーーっ。

「ケイ……」

 彰が俺のそばに寄ってくる。もう少し、あと少し。まるでスローモーションを見ているみたいだ。

「彰」

 無意識にヤツに向かって手を広げてた。

「彰、あの」

 

「抱っこ」

 

 すると彰はすごいびっくりした顔をして、それからはちきれそうな笑顔を見せて俺のことを抱きしめた。

 ううっ、あんまりギューってすんな、苦しいって。

 じたばたしてると彰の肩越しに青空が見える。

 

 ふんだ。

 悪くない、悪くないか。

 こんな風に見る『青空』も。




FIN

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2006/7/20  update

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ながーーーい間お付き合いいただき有難うございました。やっと完結させることができほっとしております。

本当に本当にお付き合いくださり有難うございました。