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 うう、これが女性としての私に向けられたものだったならどんなに素敵だろう。

  しかたがない、姉には「誘われて夕食にいくことにした。絶対絶対あとについてきてね」とメールした。

  嬉々としたメールが即で返ってきたのは言うまでもない。



 彼と一緒に外に出ると恐ろしいまでの強い視線を感じた。「お姉ちゃんだ」

  きっと今車の中から彼の外見すべてをチェックして歓喜の妄想にふけっているにちがいない。

「ちゃんとついて来てよ」。小さい声でつぶやいた。
 

「アルコールとってしまったけど、私はジンライムを飲んだだけだし、車で移動しようか」

  うっ。狭い所でいきなり2人きりになってしまう。ちょっと勘弁だなぁ。

「うーん。それより、どっかこの近くのレストランにでも入りませんか」

  さりげなく同乗拒否の上、提案してみた。

  駄目押しで「実はあまりお腹がすいてなくて。ラーメンでもいいくらいなんです」

 これでどうだ。

「麺類か、じゃぁ近くにいい店を知っている。行こう」そういって少し前を歩き出した。

  いい店か、この辺にラーメン屋なんてあったかな、なんて思っていたらとんでもない、

  おそらく会員制であろうすごい和食専門店へ連れて行かれてしまった。

  さっすがお約束、またしても外さない。



  案の定こっそり付いてきたはずの姉ははいれず、「外で待っているわ」とハートマーク付の

  メールが来た。今頃嬉々として次回作のプロットでも作っているに違いない。

  結局個室に通されてしまい、できるだけ避けていたはずなのに2人きりになってしまった。

 

 彼は手早くオーダーをすませると、

「できるだけ軽いものを作ってくれるよう御願いしておいた。どうだろう。そろそろ自己紹介させ

てもらえるかな」

……そう言えばまだ名前も知らなかった。

「ご、ごめんなさい。まだ名前もいってなかった。私、その寺崎啓(てらさきけい)です」

「ケイか、呼びやすくて素敵な名前だね。私は沼田真吾(ぬまたしんご)。真吾と呼んでくれればいい」

  いきなり呼び捨てって、できないわよ。外人じゃないんだから。

「年は私より上ってことはありえないな、20歳くらい」

「いえ、22歳です。し、真吾さんは」

「27歳」

「えーーーー」

「落ち着いてる感じがする。30歳くらいに見えた……」

「それは、ちょっとひどくないか」

 最初は緊張していたけど、お料理が来て、お酒が出て、ちなみに冷酒が格別でするするとのどを通る。

 気がつけばすごく打ち解けていた。

 

 正直、楽しかった。 彼も楽しそうに見えたのは私の願望だろうか。

  神様、どうして私は「あんなところで」真吾さんと出会ってしまったのでしょうか。
 

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2004/11/15 update

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