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『リニューアルワールド』

(4)

 

 あたしが突然飛び出してきたせいで虚をつかれたのかシュウを襲っていた奴等の動きが、一瞬とまった。

 その隙を突いて、もみ合っていたヤツから拳銃を奪った川嶋が相手を蹴り上げた。 間髪おかずに

相手を失神させると、そのままスカイラインに一発打ち込んで中に残っていたやつの動きを止めたらしい。

 大門もすぐさま起き上がってスズキの軽の運転席めがけて発砲した。

 

「川嶋、大門」

 すべてが終わると、低く落ち着いた声が響く。

「後はまかせる、適当にかたづけろ」

 

 そういった後、あたしのいるほうに振り返ってそのまままっすぐ歩いてくる。

 たった三ヶ月。あれからたった三ヶ月だ。

なのにこんなにも懐かしくて泣けてくる。 シュウ……。

 

 

 シュウがあたしの目の前にきた、そう思った瞬間。

「何やってんだい、この馬鹿娘が」

 突然、婆ちゃんの声が聞こえ、あたしは目の前が真っ白になった。

 

 

 気がつくと白くただようもやのなかをふわふわと浮いていた。

「全く、都合のいい体があったからと思って近場で手を抜いたあたしが馬鹿だったよ」

 あたしはまたしても婆ちゃんの説教をうけていた。

「あんなことしてどうするつもりだい。お前はもう光子じゃないんだ、よけいなことするんじゃないよ」

「でもシュウが……」

「お前、仏壇の前でよくいってたじゃないか」

「は?」

 怒りモード全開だった婆ちゃんの声が急に小さくなった。

「極道は嫌だ、生まれ変わったら『完璧なカタギ』で平凡な暮らしがしたい、って」

「婆ちゃん」

 そういえば嫌なことがある度に仏壇の前でグチったっけ。ちゃんと聞いていたんだ。

 ちょっと感動して婆ちゃんの肩に手をかけようとすると、婆ちゃんはすぐさまそれを振り払った。

「うるさいね、いいかい、見てごらん、コイツをさ」 そういって下を指差す。

 悠は……あたしは布団を敷いてもらってぐっすりと眠っている。場所は神代組本宅の仏間かな、

いやその隣の和室だ。

 そしてその横には。

シュウだ。 シュウが布団の横に座ってあたしの顔をじっとみつめている。

 

「勘のいい男だからね、せいぜいばれないように気をつけるんだね。でないとあんた結局極道から

離れられなくなるよ」

 それを聞いてあたしは首をかしげた。

「なんで? 魂だけが別の子にはいったなんて普通信じないだろうし、バレたところでどうして極道から

離れられなくなるのさ」

 あたしがそういうと婆ちゃんは思いっきり肩を落としてため息をついた。

「お前は……本当に馬鹿だね、もういいよ、さっさとお戻り」

 

 

 そして。今度こそ本当に目が覚めた。

 さっき見た通りあたしは布団に寝かされていた。でも横にシュウはいない。

 家の中はしんと静まり返っていてまるで通夜みたいだ。

「よいしょ」

 起き上がって何気に仏間へのふすまをあけて中をのぞいた。

「な、なんだい、こりゃぁ」

 仏間にはたいそうごりっぱな祭壇があり、その中央には大きく引き伸ばされた写真が額にはいっ

て飾られていた。

 

バブリー時代のあたしのボディコン姿だった。


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2006/12/29 update  

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