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『タラチネの涙』

(3)

 

「シュウ」

 わかってるよ。もうあたしの死に目なんざみたくないってわけよね。

 ううっ、じーんと来る話じゃないか、さすがB型だったあたしが悠になってA型に変わっちまっただけの

ことはある、ひねくれずに感動しちゃったじゃないか。

「大丈夫、無茶はしないよ」

 あたしの言葉に、シュウは何も言わずただ心配そうな顔をしていた。

 

 

 

「さあてと、あたしも勉強ばっかりしてないでちょいと探りを入れてみるか」

 シュウにはとめられたけどやっぱりコレは渦中のあたしが探るのが一番だろう。

 翌日、登校したあたしはひとりうなずいた。

「やっぱりもう一度行ってみるか」

 あたしは悠が発見された学校の裏手、それも建物の死角になってて人が来ないところへ足をすすめた。

 前にも何度か行ったけど、まぁ、現場百回って言うじゃないか。

 資料によると手首を切った悠が発見されたとき、その切った手はご丁寧に水を入れたバケツに

つけこまれていた。

「全く、そういう丁寧な仕事するから死んじまうんじゃないか、あれ?」

 低い男の声が聞こえ、なにやら音がする。

「悠が倒れていた場所からか」

 建物の影からのぞきこんでみると。

「あらら、やっちゃってるねぇ」

 気弱そうな、眼鏡をかけた男の子。 あれは同じクラスの澤藤君、だったかな。

 ちょいと背の高い、いまどきの不良に囲まれてるじゃないか。

 やっぱ、あれかな。喝上げ?

 あーあ、可哀想に顔殴られちまって。いくら金を持ってないからって『顔』を殴るたぁ、いけないね。

「おい」

「なんだよお前」

 あたしが奴等の前に歩いていくと、手前の一人が小生意気な言葉を投げつけてきた。

「図体のでかい男が3人がかりで、まぁ。そいつをどうする気だい」

 こういう馬鹿どもは名前なんか要らないね。A、B、Cで充分だ。

「どうするって、別に、俺達なかよしだよな、澤藤」

 馬鹿Aが澤藤君の肩をだく。彼ときたら顔も上げずになすがままになっている。ああ、イラつくねぇ。

「へえ、なかよしってのは無理やり金を借りることを言うのかい? 知らなかったね」

 馬鹿Bの眉毛がピクリと動く。

「ああ、なんだお前、死にぞこないの、なんていったかな」

 言いながらA、B、Cそろってあたしをにらみつけてきた。こいつ等アホだね。やくざの強面見まくってきた

あたしにそんな強がった顔みせたってコワくないわ。

 ところがあたしが奴等を睨み付けると同時に、あたしの頬に何かぶつかった感触がして吹っ飛んだ。

 森光子よりもよほどりっぱなでんぐり返しをしたあたしの視界には青空が飛び込んできたじゃないの。

「コイツばかじゃね、ちょっと触っただけでぶっ飛んでやんの」 

 ゲラゲラ笑いやがって、今度は馬鹿Cか。

 ふん。

 あたしはゆっくりと立ち上がった。

「いてて、いい度胸だねぇ、かわいい悠くんの顔こんなにしてくれちゃって・・・・・・ゴラァ!」

 今だに笑っている馬鹿Cのまたぐらめがけて思いっきり蹴り上げる。

「何だっ、お前」

 お次はB。腹に膝蹴りを3発連打、後ろから寄ってきた馬鹿Aには思いっきり急所に踵を叩き込む。

「どうだい、無様だねぇ」

 倒れた馬鹿どもを見ると、あたしは起き上がってきたBの胸ぐらをひっつかんで壁にたたきつけた。

順子先輩の教えを知らないのかい、やるんなら顔じゃなくてボディだ! ボディ!」※三原順子のこと

 とどめに鳩尾へ膝を打ち込むとBは白目をむいて倒れた。

 

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2008/1/3 update  

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