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『タラチネの涙』

立花薫

(1)


この作品は「リニューアルワールド」の続編になります。
まずはそちらからお読みになっていただくとよりお楽しみいただけます。

たぶん。

 

 

「このアホ、タコ、すっとこどっこい!」

 滑るように走る車の中であたしは怒りを爆発させていた。

「今はまだダメだ」

 そうばっさりと言い切った、あたしの隣でふてぶてしく座っている元夫、神代修治。

 関東でもその名をしられた
神代組三代目組長だ。

 組長やるくらいだから態度も図体もでかいし長年のヤクザ生活で目つきもするどい。

 対して今のあたしは諸般の事情で体は17歳の高校生だ。

 男の子のくせにお目々くりくりの童顔だし、体も華奢だけど、あんたなんかちっともこわくないからね。

「うるさい、あんたに何が分かるんだい。せっかく、せっかく……」

「勘違いするな、『今』はやめておけと言っているだけだ」

 きーっ。シュウの言葉にあたしは頭を振って怒り狂った。

「なに言ってんだい、いいかい、同級生が『帰りマックよっていかね?』て誘ってくれたんだよ。

同級生だよ、同級生。僕は補修だらけだし、みんな受験を前に忙しいんだ。そんななか

めったにないチャンスだったのに。次はないかもしれないのに〜」

 放課後、学生、寄り道、マック。ああ、このキーワードだけでも青春感じて、もだえちまうじゃないか。

 あたしが学生時代一度も味わったことのない、そんな貴重なお誘いを邪魔しやがって。

 

 

 復学してはや三ヶ月。授業の遅れを取り戻すため補習を受け続ける毎日だったけれど

今日は先生の都合で補習がなくなった。

 それで同級生の一人が誘ってくれてさ。そりゃもううれしくて鼻の穴おっぴろげてOKしたわよ。

 なのに校門をでてちょっと歩いたらシュウから携帯に電話がきて、

「大事な用がある。これから迎えに行くから断れ」

 ときたもんだ。どうだい、これが怒らずにいられようか。

 

 

「マンションに付いたら事情を説明してやるから落ち着け。補習がなかったのならいつもよりはゆっくりして

いけるんだろう」

  そうだ。コイツときたらあたしと二人で過ごすためになんとマンションを購入してしまったのだ。

「えっ、なんだ、マンションに行くの? 大事な用事ってのはどうしたんだい」

「お前と一緒にいるってことが大事な用事だ」

 ばっ、何言ってんだい。

 ……ごまかされないから。そうは思いながらも、あたしは怒りの矛を収めたのだった。

 

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2007/5/29 update  

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