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(7)
 

 明らかに一目で自分に心酔しているバーサの様子を見てルリナ姫は満足そうに微笑むと

「バーサといいましたか。私はしばらくこの城にいるつもりです」 と声をかけた。

「は、はい」

 バーサは顔を伏せてうなずいた。

「ときにお前はアルド王子と懇意とか」

「いいえ……王子は他国の話を聞くのがお好きなのです。あの、その、未来の王として、勉学の一環としてお話を

聞いていただいております」

 いつになくしどろもどろにバーサが答えると、

「すてきだわ。今度からその席に私もご一緒させていただきましょう、いいわね、サガ宰相殿」

 ルリナ姫がにっこり笑ってサガにそういうと、

「そうですね。ルリナ姫がご一緒となりますと、ご一緒されている乳母殿、姫君の侍女と弊国がご用意する

侍女、それから警備のものもご一緒させていただくことになります」

それを聞くとルリナ姫はすうっと目をほそめた。どうやら機嫌を悪くしたようである。

「私気分がすぐれませんの。もう休みます」

そういうとぷいと背を向けて部屋の奥へ行ってしまった。

 

 

「宰相殿、あれはあんまりではありませんか」

 めずらしくバーサが不満げにいう。

「そうかな。実際隣国の姫君なのだからあれくらいはしないといけないが」

 そう聞くとバーサは小さい声で

「あの、なんていうか、その、王子とルリナ姫二人きりにしてあげるべきなのでは……」

「だめだ。一度それを許してしまうと婚約と同じ意味をもってしまうのだよ、バーサ」

 その言葉をきいてバーサはうなだれた。

「王子はルリナ姫がお嫌いなのでしょうか……ね……」

 

 

「バーサ、バーサはどこにいる」

「バーサ先生ならお帰りになったようですが」 アルド王子の問いかけに兵士の一人がこたえると

「分かった……ではサガを呼んでくれ」

 アルド王子はサガ宰相を呼ぶよう伝えると不機嫌をかくさぬまま椅子に座った。

 しばらくしてサガ宰相がやってくると、低い声で聞く。

「バーサを直接ルリナにあわせたそうだな」

「はい、ルリナ様がお呼びでしたので」

「勝手なことを」

「どうやらバーサはルリナ姫に気に入られたようで。バーサは誰からも好かれるようですな」 

 サガ宰相は憮然としている王子に、そう言って彼の不機嫌に拍車をかけた。

 

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2005/7/10 update

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