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「ああ。適当でいいよ。入り口のそばにいるようにするからさ。 いいよな。オトコはちょっといいスーツきて終わり

だろ。 はぁ、女やるってさぁ、めんどくさいんだぞ」

 そういうと、俺はめちゃくちゃ深いため息をついた。

 

 

 とうとう、その日を迎えてしまった。

 なんの因果かすごくいい天気。 まぁ、パーティは夜だし、関係ないか。

 昼に吉岡が自宅まで迎えに来て、当然のごとく美容室まで強制連行された。

「圭一くうん。今日はがんばってオトコ引っ掛けてね、とびっきりいい男でなくちゃだめだぞ〜」

ときた。

 へっ。言ってろよ。それに関しちゃ自信があるぜ。彰を見てひっくりかえるなよ。

 

 

 美容室で死ぬ思いをして何とか準備をすませ、そのまま吉岡の車に乗り込む。

 そして会場である銀座のホテルへと向かった。 

 

……うそだろ。

手の震えがとまらない。 どうやら車の中で俺の緊張はピークに達したようだ。

一言も話せないでいると 

「おまえさぁ」 

吉岡がポツリといった。

「俺の女装より、はるかにきちんとした女にみえるよなぁ。なーんか、彼女と一緒にきたって感じ」

なんていって擦り寄ってくるのにはまいった。

「バカヤロー! そばくるな、うっとおしい〜!」

 

 やっとホテルに着いて車をおりると、

「おい、ちょっと見てみろよ」

 吉岡が俺をつつく。

 前を見るとなんとスーツをばっちり着こなした彰が車を降りるところだった。

 手にはお祝い用なのかかわいい花束をもっている。

「かっこいい……」

 うっかり俺はみとれてしまった。

 吉岡もおどろいたようで

「おい、おい、今日はモデルでも呼んでるのかよ〜。俺あいつの横にはたてねーよ」

「だな。似たようなスーツでも着るやつが違うとずいぶん違うもんだなぁ」

 瞬間俺は吉岡の拳骨をくらった。 

 か、かつらがずれるだろうが……。

 

 会場に着くとすぐ受付にいき、俺は自分の代理ってことで入場した。

 すぐにバレるんじゃないかとヒヤヒヤしたが、吉岡のおかげで一言も声を出さずにすんだせいかなんの

問題もおこらなかった。

よしっ。ここからが本番だ。

最後に吉岡が小声で、

「じゃ、俺いくからな。罰ゲーム忘れるなよ。 ま、だれも見てくれなかったら仕方ない。俺に声かけろよ。」

「おう。なんだよ。やさしいじゃねーかよ」

「ばーか。お前女らしく話せっつーの」

 ごにょごにょ小声で話しおえると、吉岡はパーティ会場の奥へ入っていった。

 あとは黒田たちと合流して遠巻きに俺を監視するらしい。 とほほ……。

 

 立食形式のパーティで招待客もかなりのものだ。

 女性の衣装が皆あでやかで中には露出度の高いドレスを着ている子もいたりする。俺は立場を忘れて

鼻の下を伸ばしてしまう。 時代遅れといわれようがキャミソールドレスは絶対いい!

 できればハンカチかなんか落として俺の目の前で拾ってほしい。

「いけないなぁ。今の俺は女だった」 

 こんなところで前かがみになるわけにいかんだろーが。

……

彰まだこないかな。こんな格好でどうしていいかわからない。

「おーい。彰〜。お前どこ行ってるんだよ」

 

 そうつぶやいた瞬間、すぐ横に人の気配を感じた。

 なれないヒールを履いていた俺は、よけようとしてうっかりその場に転んでしまった。

「すみません。大丈夫ですか?」

 起こしてくれた人物の顔をみて驚いた。

 彰がウルトラ王子様スマイルで俺を見つめているじゃないか。

 

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2005/1/4 update

2005/5/4 誤字、表記修正

2005/6/26 壁紙変更 

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