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「僕はケイが好きだから」
って……。
「は?」
えーっと。何だって。
彰の言った言葉の意味が脳に辿り着かない。
大体キャパの少ない俺なのに、ここんとこ色々な事が多すぎて訳がわからない。
その時、少し強めの風が吹いて彰が自分の前髪をかきあげる。
そのしぐさがカッコいいのにすっごく自然だ。
で、俺は自分が何をいわれたのかも忘れて見とれてしまった。
「あ、ケイ。間違えないで欲しいんだけど」
彰がそう言って近づいてきて。
「僕の『好き』はこっちの『好き』だからね」
近づいてきた彰の顔が視界の右にそれて何かが頬に触れた。それが彰の唇だったと気が付いたのはこりゃまた
しばらくたった後だ。
完全放心状態の俺に彰は辛抱強く反応を待っていた。
「あ、あ、あ、お、じじ自分……わわわ……」(作者訳:彰、お前自分が何言ってるのか分かってんのかよ)
やっと意味を理解した俺の口からでた言葉はちっとも意味を成していなかった。
すると彰は噴出すように笑って、
「うん。ケイが何を言ってるか分かるよ」
ぽんぽん、まるで子供をあやすように俺の頭をなでる。
「分かった? そういう訳だから僕はケイに煩がられてもケイのこと心配するしケイの為にいいと思ったらおせっかいする」
なっ……
「……ア……アホかお前は。だいたい俺は男だって……」
「ちがうんだなぁ。それ」
彰は首をかしげると、
「『ケイ』が好きなんであって別に男が好きなわけじゃないよ」
ちょっとまでっつーの。やっぱり意味わかんねぇよ。
「おい、相原。 お前大丈夫か。目がうつろだぞ」
「あ」
吉岡につつかれて気が付くと講義が終わっていた。目をつぶるとしぱしぱと痛みが走る。どうやら俺はまばたきす
ることも忘れていたらしい。
で、まばたきすら忘れてた俺がノートを取っているはずが無かった。
「うがー。太郎ちゃん。ノートコピーさせてくれ〜。って、いでっ、殴るなって吉岡」
「名前で呼ぶなっつってんだろ、全く。ノートもとらずに何の為に授業でてたんだよ」
吉岡にぶつぶつ言われながら、それでもそれに答える元気も無くて俺は机に突っ伏した。
「お前、最近変だぞ。なんか悩みがあったら相談のるぞ」
「別に……サンキュ」
はあ。彰と話をしてから数日。俺はずっとこんな感じだ。
なんだかな。
「分かった。お前まーだ失恋ひきずってるんだろう」 吉岡のそんな言葉を聴きながら、そんな平和な時代もあったよなぁ。
なんて思っていたのに。
相原はこんな俺をみて全然違うことを考えていたらしい。
2005/9/6 update