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 目が覚めると、彰の顔がすぐそばにあった。

  うーん。さすがに何度目かになるととりあえず驚きはしなくなったな。

  それもちとヤバイけど。

  朝早また悪夢にうなされそうだった時彰に起こされたのをぼんやりと思い出した。

「母さんのこと聞いてたっけ。こいつ、なんでこんなにおせっかいなんだろうなぁ」

 つぶやきながら彰の顔をじっくりと見る。

「つーか、俺のこと甘やかしすぎ。 おかげで彰と飲みに行くと安心してのみ過ぎちゃうじゃんか。ったく」

  女の子みたいに綺麗な顔をしているのはこいつのほうだ。まつげは長いし、色は白いし、くちびるはつる

つるしてそうだし。トドメにおパリのモデルだし。
 


  すると視線を感じたのか彰がのろのろと目をあけた。もちろんそばにいて奴の顔をみていた俺とばっち

り目が合ってしまった。

「ケイ、おはよう……はい」

  俺に向けて両手をさしだしてくる、いい加減にしろよ。また『抱っこ』か。

「お目覚めのキス……」

だーっ、悪化してる、 何を寝ぼけておるのだコイツは〜

「アホいってないで、起きろ、全くもう。よりによって彼女と間違えるな」

そうどなると枕を顔にぶつけてやった。

「うーん。彼女となんかまちがえてないよ」

それはそれでもっと問題だ。アホ。

「ほら。修学旅行だ」 照れ隠しにぼこぼこ枕をなげつける。

「わかったわかった。起きるよ」

  そうだ、分かればいいんだ。分かれば。
 


  その後は一緒に朝ごはんをたべて(さすがに今回は俺がつくった。と、いうかパン焼いた)そろそろ出ようか

と思ったとき、携帯がなった。

「はい。あ、親父、うん。うん。分かった。3時までにいくよ」

 俺の家はひところブームだったスーパー銭湯を営んでいる。昔ながらの銭湯とは違い実際に温泉を掘って、

いろいろな浴場をつくり仮眠室やレストラン、宴会場なんかあるあれだ。

 今日は急な大人数の宴会の予約が入ったとかで親父から手伝うようお呼びがかかった。

「お父さんからの電話」 彰がきいてきたので

「うん。言ってあったっけ、俺んち風呂屋。っと、スーパー銭湯やってんの。一応本物の温泉つき」

「すーぱーせんとう。ああ、温泉ね。それでお父さんの手伝いにいくの」

「そ。大人数の宴会が入ったらしい」

「ケイのお父さんがそこにいるの」

「うん」

「ふーん。ケイ。僕も一緒にいっていい」

ほぇ?

「え、何。お前来たいの」

「そう。僕もケイのお仕事を見学するの」
 

 

 そういう訳で大学で講義を受けた後すぐに彰と一緒に俺のうち、じゃ、なかった八王子にあるスーパー

銭湯に向かった。

「彰、いっとくけど俺めちゃめちゃ忙しいと思うからなにも相手できないよ」

「いいよ。よければ僕も手伝うよ。ダメかな」

「いいよ、いいんだけどさ」

 うーん。うちってさあ、宴会の席を手伝うときは温泉ロゴ入りの色とりどりのはっぴ着るんだけど、彰がそれを

着るなんて想像できないよな……ぷぷ……。おもしろいから言わないでおこう。

 

と、心の中で笑っていた俺だが一応着いてから親父に彰を紹介、手伝ってもらうかどうか聞いてみた。

「悪いね、助かるよ、バイト君が休んじゃってこまってたんだよ。ちゃんとバイト代出すからしっかり働いてね」

ときた。ははっ。やっぱりただの見学だけにはさせてもらえないみたい。

 そして出てきたのは、はっぴじゃなくてブルーのエプロン。もちろん男性が着てもおかしくないデザインのヤツ。

うわー。いつも俺に強制的に着せるはっぴはどうしたんだ。ずるい。差別だ、差別だ、つまんねぇ。

 前に吉岡と野上が来たときは3人それぞれ赤、青、黄色のはっぴわたされて、まるで『ハリケンジャー』

みたいだったのだ。(親父いわく、『レッツゴー3匹』)

でも今回はさすがに俺だけはっぴはかわいそうと思ったのか同じエプロンをよこした。

 

 その日はなんと50人の団体で準備からはじまった忙しさは想像を絶するものだった。

宴会がはじまると運んでも運んでもビールはたらなくなるし、ジュースを含めて飲み物を運ぶだけでも

大変だった。

彰は大丈夫かな、と思って様子をみるとおばさんたちにかこまれて「ぼく〜こっちジュース〜」とか言われてる。

あーーあ、やっぱおば様のアイドルになってるよ。 なんかぜんぜん合わなくて、おかしい。

 

 そんな感じで宴会がおわり片付けまで手伝った後にやっと開放された。

 俺たちが夕飯にまかないの『てんぷら定食』を食べていると、奥から親父がやってきた。

「やあ、今日は助かったよ。これすくないけど」

親父が封筒に入れたバイト料を払おうとしたところ、彰ときたら

「無理をいってお邪魔したのは僕ですから」

 とか言って断ろうとしている。

「えー。彰、遠慮するなよ。めちゃくちゃ働いたんだし、もらっとけよ」

「そうそう、遠慮しないで」 親父がそういうと

「ありがとうございます」

 やっと受け取った。……心配するな。俺がそのぶんいつでもおごられてやるから。

 それから親父も一緒になって夕飯を食べだしたので、

「今日は兄貴どうしたの」

 軽くきくと

「うーん。母さんとちょっとな」

「そ」 そんな会話をしていたら、

「圭一君のお母さんもよくこちらにくるんですか」 

  急に彰が親父に質問を始めた。


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2005/2/11 update

2005/5/4 誤字、表記修正

2005/6/26 壁紙変更 

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