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うわー。すっげぇ。
それにしても撮影ってずいぶん一杯写真を撮るんだな。 知らなかった。
カメラマンの指示にしたがっていろいろと表情を変えていく。本当にすごい。秒刻みだ。
しばらくすると衣装とメイクをかえてまた撮影。
しかしまぁ、顔とスタイルがいいってのは得だよな。 何着てもカッコイイし。うん。
でもなんか違和感があるんだよなぁ。
すると今度はモデルの女の子と一緒に写真を撮りだした。
どうやら恋人同士という設定らしい。
「もっとうれしそうに笑って、はい、見つめあって」 カメラマンの声が大きく響く。
……あれ。
やっぱり何かへんだな。 なんだろう。
女の子の横で笑う彰、一体何が変なんだろう。
そう思っていると、突然、
「どう、 カッコイイでしょう。彰」
いつの間に俺の横に来たのか、レイコさんが立っていた。
「あ、はい」
「こういうの見るのは初めて」
「はい。思っていたより大変そうですね。一度の撮影にあんなに写真を撮るなんて知らなかった
から驚きました」
「で、どう。 彰は。 ちょうど今女の子と撮影してるけど」
「どうって。うーん。なんか別人みたいです」
「そうね、モデルも俳優と同じなのよ。ていうか、もっと大変かしら。瞬時にカメラマンの期待に
こたえた表情をつくらないといけないし」
「ああ、そうですよね。でも何か……」
なんかちがうんだ。
「ひょっとしてあの笑顔のことかしら」
「あ。そうだ」
そうだ。 あの笑顔に……
するとレイコさんは笑ってこう言った。
「やっぱりばれちゃった、 さっすがお友達。 実を言うとね、彰は笑顔が苦手なのよね」
「そうなんですか」
そうか。いつも彰のスーパースマイルを間近で見ていた俺としてはあの笑顔に違和感があったんだ。
「あれがプロになるには障害なのよ。本人も自覚しているみたい。結構度胸もあるのになぜかしらね」
本人も自覚か。彰が仕事のことを「バイト」っていう理由はその辺にあるのかな。
すると休憩になったのか彰がやってきた。
「休憩か」
「ん。２０分休憩」
ちょっと疲れた感じだ。
「久々だから調子わるいの。 だめよ、やっぱりちょくちょく仕事しないと。勘がにぶるんだから」
レイコさんが話しかけているのに彰はだまったままだ。 やっぱり機嫌悪いのかな。
それとも仕事のときってこんな感じなのかな。いや、きっと俺が勝手についてきちゃったから……
その時だった。俺の携帯からメール着信の音楽が聞こえた。
気まずいときだったから丁度いいや、なんて軽い気持ちでメールをみると吉岡からだった。
『この間は結局寝言聞けなくてスマン。お詫びにこれをプレゼント（ハートマーク）喜べよ。うふっ。吉岡』
「なんだこりゃ」
添付を開いてみると……
なんと俺が罰ゲームで女装したときの写真だった。彰と２人、寄り添ってニコニコした顔で写っている。
あわわ。 こ、こんな写真いつの間に。
「あんの野郎、 なにが『うふっ』だ！」
うっかり自分がどこにいるか忘れて大声をだしてしまった。
「どうしたの」
気がつくと彰が俺の携帯をのぞいている。
「あ、これ……」
「わーーーーーっ。彰、見るな。見るな。なんでもない。忘れろ」
俺はあわてて隠したけど、彰が後ろから俺の首をがっちりかかえこんで、携帯を取り上げてしまった。
「くそー、返せ〜」
「やだ」
彰は急に元気になって画面に見入っている。
「いいな、これちょうだい」
「だめだっ。絶対やらない。おいこら、放せよ〜」
こんなとき、彰との１０センチある身長差がうらめしい。
「ちくしょう、吉岡の奴、こんな写真撮りやがって！」
「いいじゃないか。もらうよ。僕にも半分権利があるわけだし」
彰はおそろしいすばやさで自分のアドレスに転送したようだ。
ぎゃーーーー。
「バカ野郎、消せ〜！ なに考えてるんだよ。お前は」
彰は大声で笑いながら、「もらった」なんて言ってる。
ちくしょ〜。
はしゃぐ俺たちをみて今度はレイコさんが、
「仲間にいれてちょうだいよ。なに見てるの」
そういって彰から携帯をひったくった。
おわっ。 レイコさんってばただでさえ背が高いのにヒールまではいてるからっ。
「だ、だめです。返してください」
するとレイコさんはちゃめっけたっぷりに微笑みながら俺たちにくるっと背を向けると、携帯を覗き込んだ。
うがーっ。
「あら、これ彰じゃない。かわいい娘（こ）と写真とったのね。いい笑顔だわ」
そういってじっくり写真をみている。
彰〜、いいかげん放してくれよ。
「本当にいい笑顔だわ。 あら、この娘（こ）……」
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2005/1/26 update
2005/5/4 誤字、表記修正
2005/6/26 壁紙変更
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