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 俺はめちゃくちゃ気にしてるのに彰ときたらぜんぜん平気な様子だった。

 それはそれでなんかムカつく。

 

 でも結局すすめられるまま、俺は彰のマンションに泊まることにしてしまった。

 

 シャワーをかりた後も、なんか気になってなかなかベッドへいけない。つーか行きづらい。

 うーん。

 ひょっとして彰は気を使って『気にしないふり』してくれているのかもしれない。

 うーん。

「もう寝るか」

 俺が一生懸命考えているというのに、彰はとことん平気な顔をして寝室へ向かった。 

 とりあえず俺も一緒に行ったんだけど。なんかやっぱりなぁ。

「あのさぁ。彰」

「なぁに」

「まだそんなに寒くないし、俺毛布かしてくれたらソファーにねる」

「……なんで」

 こいつ。わかんねーのかよ。

「また朝俺が寝ぼけたら……やだろ。その……」

俺がもごもごいうと、

「ああ、そんなこと気にしてたの。なんで気にするのかな。 じゃぁ。はい」

 ベッドに腰掛けた状態で彰が俺に向かって両うでを広げて見せる。

 は、 あのー。 意味わからないんですけど。

 俺はきっと顔中にクエスチョンマークをうかべていたに違いない。

 彰はニコニコ笑いながら、

「だから。そんなこと気にするなら最初から『抱っこ』しててあげるよ」

「おっ、お前。バカかっ」

 顔が熱くなって真っ赤になっているのがわかる。

「えー。だって学校とかで、団体で旅行とかいったりするんでしょ」

 怒りまくる俺をみて彰が訳のわからないことを言い出した。

「はぁ」

「で、夜友達同士で寝るんでしょ」

「お前、ひょっとして修学旅行のこと言ってるのか」

 だからなんでそんな話になるんだ。

「ああ、そういうんだっけ」

「だからそれがどういう関係があるんだよっ」

 大体お前いつまで手を広げてるんだ。

「僕、その修学旅行っていったことないからさ。でも夜になると友達同士で仲良く遊んで寝るんでしょ、

それとほとんど同じことじゃないのかなぁ」

「……それは『枕投げ』とかそういうことだろ」

 完全脱力。 こいつ誰から何を吹き込まれてるんだっ。 

 修学旅行にいってヤロー同士が抱き合ってねるかっつーの。 想像しただけで気色悪い。

「同じだってば。はい」

 彰はさらに手を突き出す。

「だからーっ。それは違う」

「何が違うの」

 そういってくすくす笑っている。

 こいつはーーーー!

 やっぱり絶対、絶対俺のことからかってるんだ。

 

「わかった。これから『枕投げ』をきっちり教えてやるから普通に寝ろ」

 俺はそばにあったクッションをつかんで彰になげつけた。

 

 そんなこんなで結局寝たのは夜中の2時過ぎ。

ったく彰のアホな冗談のせいで余計な体力つかったじゃないかよ。

 とりあえず同じベッドを使うことにして一応奴には背を向けてでっかいクッションを抱えて寝ることにした。

 そんな俺をみて彰は笑ってたけど。

 でもさ。これだけ疲れておけば変な夢見なくてすむかも。

 そんなことを考えつつ、俺はぐっすり眠ってしまったのだった。

 

 

 まぶたの裏がだんだん赤くなっていく。

 もう部屋の中は明るいのかな。

 

 俺は公園にいた。

 まだ小さい兄貴と小さい俺、二人で並んでブランコをこいでいる。

ギィ…… ギィ……

 だんだん勢いがついてきて俺はなんだか空へ飛べそうな気がしてきた。

「えーい」

 勢いあまって手をはなす。 すると空は飛べなかったけどうまい具合にブランコの手前に着地した。

えへへ。

「けいちゃん、あぶないよっ」

 横から兄貴が俺を抱え込む。

 ごっ。

 すごい音がして兄貴の体重が俺にかかる。

 兄貴の頭に俺ののっていたブランコがあたったのだ。

「おにいちゃん」

 兄貴につぶされながら俺は泣き出す。

 すると母さんがやってきて恐ろしい形相で俺を突き飛ばした。

「どうしてっ」

 母さんが叫ぶ。

「なんであなたがかばうのよっ」

 そうして兄貴をかかえたまま母さんは走り出す。

「おかあさん。ごめんなさい。まってよ。まってよ。まって。ボクをおいていかないで」

 

 

「ケイ!」

 気がつくと起き上がった彰がまた俺を抱え込んでいた。

 そのときの俺に彰をよける余裕なんてない。顔から汗が流れているのがわかる。

「彰……俺、俺、ご、ごめんな」

「だから抱っこしてるっていったのに」

 怒ったようにそういって俺の背中をぽんぽんたたく。

 俺は彰にしがみつきながら思い出していた。

 そうだ。すっと忘れてた。

『俺の前の彼女が、なぜ一晩一緒にいた後、急に態度が変わったのか』

 きっと、きっと俺同じことしてたんだ。

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2005/1/19 update

2005/5/4 誤字、表記修正

2005/6/26 壁紙変更 

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