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「なんだよ、その態度。失礼だぞ」

 真はじつに女の子らしく頬っぺたを膨らませてすねている。お前こそそういう態度で『男』だと主張して

いいと思っているのか。

「あー、あのさ。お前それマジなわけ?」

 ちょっとあきれたように俺が言うと、真はまた真剣な表情に戻って言った。

「僕、めちゃくちゃ本気。顔を見たらどきどき、なんて初恋レベルじゃないぞ。ちゃんと男として

彼女を守りたいし、養いたいし。あ、もちろん彼女は仕事をしているからいろいろと協力したいし……」

 おいおい、すでにこいつの中じゃ『結婚前提』まで話が進んでるぞ。

「問題は子供なんだけど。とりあえず僕の卵子をとっておいて、どっかで精子を買って受精させてそれから

彼女のおなかで成長させるって手があるんだよ」

 げ、前提どころか、そんなことまで考えてやがる。

 だいたいそうやすやすと『どっか』で『精子』を買うな。

「お前な。その前に彼女とはどうなんだ。そういうからには告白して付き合ってるんだろうな」

 すると真はがっくりと肩を落として冷め切ったコーヒーをスプーンでがしゃがしゃかきまぜた。

「それなんだよ。めいっぱいアプローチはしてるんだ。できるだけそばにいて好きだって告白もして」

 なんか先が読めてきたぞ。

「でもさ。僕、女としか見てもらえていないんだよ」

 あらま。そのまんま。

「真先生、質問っす」

「なぁに」

 だから、そんな風に甘い声を出して小首を傾げるな。

「いつもそういう格好で彼女と一緒にいる訳」

 すると真は自分の胸元に目を落とした。

「いや、彼女の前では体のラインが出ない上着にジーンズがほとんど。できるだけ化粧もしないように

してるし」

「もう一つ質問。そもそもお前は中身が男で、『男として』彼女のことを想っている、それを彼女は知らないのか」

 真はちょっと不満げに唇をとがらせるとしぶしぶうなずいた。

 おいおい、結婚とか子供とか……告白以前の問題じゃないか。

「はぁ」 俺はおもいっきりため息をついた。

「おい、真。そもそもお前は順序を間違えている」 俺がそういうと真は目を見開いて俺を見つめた。

「まずは彼女にお前の中身が男だって事を伝えて分かってもらう、そのうえで告白する、受け入れてもらえ

たら(ここが一番難しいけど)初めてさっき言ってたことを考えろ」

 俺はここまで言うとすっかりひえてまずくなったコーヒーを飲み干した。

 

「ふぅん……やっぱさ、男としての恋愛は男にしか相談できないよな。」

 うつむいた真がぽつりと言った。

「長瀬さあ、僕の初めての『友達』になってくれないか」

 はあ?

「だって僕、男として友達できたことないし。本当はでっかいおっぱいのお姉さん見たら『でけー』とか

いいたいし、やっぱさ、普通に恋愛のことだって話したいんだ。でもできなかったから」

「……」

 どうしてこうなるんだよ。悪いけど『俺』はお姉さんみてもなんにも感じないんだよっつーの。 

 

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2005/9/25 update

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