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『新説・シンデレラ』
(3)
「白い騎士さま〜」
「ちょっともう勘弁してほしいな」
若い娘たちをふりきって逃走中の恵は日ごろ入ったこともないお城で迷子になってしまいました。
それでもまだ振り返れば黄色い声の追っ手が迫ってきます。
「きゃーっ、ど、どうしよう」
困っていると
「こっちだ」
ぐいっ。
誰かが腕を引っ張って部屋の中へ誘導してくれました。
「ああ、ありがとうございました」
そういって顔を上げると黒い衣装をきた、それはそれは見目麗しい男性が立っているではありませんか。
(うわーーっ、かっこいいっ。どうした娘たち、ここにだって素敵な男性はいるじゃない、私を追いかけている場合じゃ
ないのよ〜。)
そう思っておもわずぽーっとしてしまいました。
「大丈夫か」
素敵な男性に言われて免疫のない恵はそのまま真っ赤になってうつむきました。
「舞踏会を楽しんでいるように見えたが、なぜ逃げる」
そう聞かれて
「あの、逃げるのがクセでして、じゃなかった、ご、ご覧になっていたのですか」
恵はどきまぎしながら答えました。
「実は、実は私、森の妖精の魔法で男装をしていますが本当は女なんです。」
おやおや、本編でなかなか言えなかった恵はこっちではあっさり暴露、森の妖精に魔法をかけられてこの姿に
なってしまったことを話しました。
一目で心惹かれたこの男性ににはどうしても誤解されたくないと思ったからです。
「ほう」
ところがその男性は驚いた様子もなく、だたじっくりと恵を見つめています。
見つめられて恥ずかしくなった恵は、下を向いてつぶやきました。
「お、おかしいでしょう。こういう格好が似合う女なんて。調子に乗って踊っていたら女性たちに囲まれちゃって」
そういうと、彼は恵のあごに手をやって顔を上に向けさせ、
「名前は」 と聞いてきました。
「め、恵です」
「森の妖精はいたずら好きで有名だからな。しょうがない」
「え、そうなんですか?」
そんなことちっとも知らなかった恵は驚いてしまいました。
でもよく考えてみれば『つまんなーい』という理由で男性のケイまで女装させてしまったくらいだからやっぱりいた
ずら好きなのでしょうね、などとあくまでものんびり納得している恵なのでした。
「魔法が解けたらどうなるか、知っているか」
「え、いえ、知りません。もとの服に戻るだけではないのですか」
するとその男性はちょっとうれしそうに微笑んで、
「どうかな、とにかくもうすぐ12時だ。魔法が解けるまでここで私といたほうがいい」
なにやら思わせぶりです。不安になった恵はなおも問いかけます。
「あの、どうなるんでしょうか」
「……私といるのはいやかい」
恵はそれをきくと慌ててぷるぷると首を振りました。
「よかった。まずは乾杯しよう。ここにシャンパンを持ってこさせるから」
そういわれて恵は、
「ここに、ですか。あなたは一体……」
「ああ、失礼。君の名前は聞いたのにな。私は真吾だ」
どこかで聞いたお名前、とは思いましたが恵が真吾を王子であると気付くのはもうすこし後になります。
2005/5/3 update