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『新説・シンデレラ』
ご注意
この物語は弊サイト「青空をみあげれば」略して青空組と「逃げ上手なシンデレラ」略してシンデレラ組の合同
コメディ作品です。文中、あまりの遊びっぷりにむかつくことがあるかもしれませんが、すべて作者の趣味ですので
ご了承ください。 まずは両作品を事前にお読みいただくことが絶対条件ですが、それでもキャラクターが分かりにくい方は
以下両作品のキャラクター紹介をご覧ください。
立花薫
昔々、中世ヨーロッパ風のあるお国に、とても心優しい青年、じゃなかった娘がおりました。
彼女の名は恵。かわいそうに両親はすでに亡くなっており、いじわるな継母レイコとその娘、由衣と一緒に暮らして
おりました。
「恵、薪を割っておくれ」 「恵、馬でお使いに行ってきておくれ」 「恵、ボディガードについてきておくれ」
継母レイコと由衣は、なぜか恵に肉体労働ばかり押し付けます。
それでもいたいけな恵はにこにこと微笑みながらがっつんがっつん言いつけられた仕事をこなすのでした。
そんなある日、とても驚くべきおふれがでました。
この国の2人の王子、真吾王子と彰王子のおきさき探しのため舞踏会がひらかれることになったのです。
そしてなんと身分にかかわらず国中の若い娘を招待すると言うではありませんか。
このため国中が大騒ぎになりました。
ありとあらゆる村々のエステサロンや美容室は予約で埋まり、店で売っているドレスや美しい布や素敵な帽子は
あっというまに売り切れとなってしまいました。
おまけに『3日で身につく宮廷作法』などという便乗講座もひらかれ大盛況。これだけでも経済効果はたいしたものです。
当然ながら恵の継母レイコと義妹、由衣も大騒ぎ。
特に由衣は「誰よりもうまくダンスを踊るのよ」と宣言し、背の高い恵を相手に毎日ワルツの練習をしまくりました。
おかげで恵はすっかり男性のパートが踊れるようになってしまいました。
「いいなあ、お城で舞踏会か」
夜、自分の部屋となっている屋根裏で恵はつぶやきました。
「きっといいお酒がふるまわれるんだろうな。シャンパンにワイン……一応若い娘なんだから私にも招待状はくるだ
ろうけどお継母様は許してくださらないでしょうね」
はあ、恵はため息をつくと、
「私もいきたい。行って前に父様や母様と一緒に飲んだ様な上等のワインを味わってみたいなあ」
心からそう願って言うと、
「あなたの願いをかなえましょ〜」
そういって、きらきらと光を放ちながら『ひらめ顔』で背中に美しい羽をつけた娘が現れました。
「あなたは?」
恵が聞くと、
「森の妖精、亜紀よ」
「森の妖精???」
驚いていると妖精が言いました。
「あなたのご両親がまだお元気だったころにお願いされていたの。娘の恵が心からの願いを持った時、それをかな
えてあげてほしいって」
「そうなのですか、私の願い、ご存知なのですか」
「もっちろん♪ 舞踏会に行きたいのよね。大丈夫願いをかなえてあげる。舞踏会の当日、お仕事が済んだらこういっ
て私を呼びなさい。『おねえちゃん〜、大好き〜』ってね」
「はあ」
ほんのちょっぴり「およ?」とは思ったものの素直な恵はうなずいたのでした。
そんなこんなで時は過ぎ、とうとう舞踏会が催される夜がやってきました。
例によって言いつけられた仕事をこなし、舞踏会へと出かけるレイコと由衣を見送った恵は窓を開けて言いました。
「おねえちゃん〜、大好き〜」
すると
「はーーーーい、恵ちゃん、あたしもだーい好き」
と答えながら妖精亜紀が現れました。
恵が驚いてのけぞっていると、
「恵ちゃん、舞踏会行きたいんでしょ、じゃ、早速準備しましょうね。まずは罠にかかった『ハツカネズミ』を庭へ
もってきてちょうだい」
そういわれて恵は我に返り、いそいでネズミが入った罠のかごを持って庭へ行きました。
「もってきたわね、じゃそこに置いて」
妖精は七色に輝く杖を取り出すと、
「ネズミよ白馬に変われ、ズボラーシャ〜」
と呪文を唱えました。
するとどうでしょう。ハツカネズミは立派な鞍をつけた白馬へと変わりました。
「次は衣装ね、恵ちゃんに一番似合う衣装に変われ、ズボラーシャ〜」
すると恵はそれはそれは美しいドレスに……、あれ?
白い羽のついた帽子、金の刺繍のついた白いマント、さらに美しい飾りが施されたブーツを履いた騎士の衣装を
身にまとっていました。
「ちょっ、これはどういうことですか……」
恵が苦情を言おうと口をあけたとたん
「きゃーん、めぐたんカッコイイっ!!!」
悦に入った妖精亜紀に抱きつかれてしまいました。
恵はあきれながらも
「まあ、目的はワインだし」と前向きにとらえてそのままの衣装で白馬にまたがり、舞踏会へと向かうことに しました。
そしてなぜかそんな恵のそばを目をハートマークにしたままの妖精亜紀もついてきてしまったのでした。
城へと向かう途中、同じく舞踏会へ向かうのか馬に乗った騎士に出会いました。
あまりにも嫌そうにしている様子に恵は思わず声をかけました。
「あなたも舞踏会へ行かれるのですか」
するとその騎士は驚いたように顔をあげて
「本当は俺、舞踏会なんかいきたくないんです」 とため息をついて言いました。
目のくりくりとした、男性の割にはかわいらしい顔をしたその青年は名前を「ケイ」といいました。
「だって、皆王子目当ての女の子ばっかりでしょう。男なんかいくら貴族って言ってもダンスのための頭数そろえるだ
けでしょうし。」
それもそうね、とは思ったものの、彼のことをかわいそうに思った恵は
「でもすばらしいご馳走や、お酒がでるらしいよ。無理にダンスなんかしないで一緒に食事でもしない」
着ている衣装の都合上、すっかり男になりきって聞いたのでした。
「うわー。それすっげえいい考え。そうしようぜ、あっと」
ついつい友人口調になってしまった自分に気がついたのかケイが「ごめん」というような顔をしました。
「気にしなくていいよ、私も普通に話すから」
「はは、なんか嫌なパーティが楽しい感じに変わってきたよ」
二人は顔を見合わせてにっこりしました。
「えーー。そんなのつまんなーい」
声のしたほうを見れば、2人の後ろでほっぺたを膨らませた妖精亜紀がぷりぷり怒っています。
「このまま二人で行ったら話が膨らまないわ。つまんないわね。あ、ねえ、あなた、せっかくかわいい顔してるんだか
ら、衣装をもっと似合うものに変えてあげるわ、いい? ケイに似合う衣装に変われ、ズボラーシャ〜」
するとなんと騎士の姿だったケイはそれはかわいらしいピンク色のドレス姿へと変わっていたのです。
「うわっ、なんだよこれ! 俺は女じゃねーぞ。お前、何もんだよ。魔女か?」
「あら、聞き捨てならないわね。坊や。蛙に変えてほしいの」
「うっ」
ケイが納得した(怯えた)ようなので妖精亜紀はにっこり笑って
「そうそう、いい子ね、はい、これ」
「なんだよこれ。かつらじゃねーか」
「そうよ。そのショートヘアのままドレス姿でお城に行くつもりなの?ちゃんとかぶりなさい」
「だって。なんだよ、これ金髪ってさあ」
すると妖精はあきれたようにため息をついて
「これだから知識のない子はいやよね、女装するときはピンクのドレスに亜麻色の髪のかつらをかぶること、って
天下の手塚治虫先生がおっしゃってるのよ。言うこと聞きなさい」
こうして美しい騎士となった恵とかわいいお姫様となったケイはやむを得ずお城へと向かったのでした。
「その衣装、自分では脱げないのよ。12時になったら魔法が解けるから、それまで楽しんでね〜」
という妖精亜紀の声をききながら。
2005/5/1 update
2005/9/7 マス空抜け箇所修正