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『彰くんに教えてあげよう』

「青空をみあげれば」番外編 

「あ、ケイ、いた、いた」

「んー」

 声のしたほうを見ると相変わらず美しい顔が満面の笑みをたたえてやってくる。

 俺とこの超美形男、彰が知り合ってからもう2ヶ月たったろうか。

 ビジュアル的、おそだち的、総資産的に違うけれど、なぜか気があってよく会うようになった。

 大学でもこうしてたまに屋上で会う事がある。 そういう訳でだんだんこいつの変わった面が見えるように

なってきた。

 いや、なかなか面白いんだ、これが。



「ケイ、これなんだけど何て読むの?」

 そう言って今読んでいる本を俺の前に広げる。

「ああ、これ? 『こもれび』って読むんだよ」

「こもれび、木漏れ日……、こもれび」記憶する為かぶつぶつつぶやく。

 そう、フランス滞在が長かった彰は日本語を大分忘れていたらしい。 只今それを取り戻すべく、日本語

猛勉強中なのである。

 おまけにこの間彰のマンションで見つけちゃったんだ。

 録りだめしたDVD、そのタイトルに"Chibi-Maruko" "Sazae-san" と書かれていたのを!

 外国の人が日本文化を学ぶ際、「サザエさん」を見るよう勧められるとは聞いたことがあったけど。

 それとも単純に好きなのかな。どっちでもいいや、似合わねぇ。

 どうせならおつながりで"Kochikame"もいれてほしいところだ。


「ケイ?」

「うん、何だっけ」

「どういう意味『こもれび』って」

「後で下いったら見せてやるよ。うーんと、葉っぱのたくさんある木の下で上をみあげるとさ、葉っぱと葉っぱ

の間から太陽の光がちらちらみえるだろう。それのこと。『日の光がこぼれてくる』って感じ」

 彰はふむふむ、と言わんばかりに大きくうなずくと、

「よく分かった」

 まあ、こんな感じで本を読んでわからない字があるとききに来る。

 字を覚える為とかで文字が小さい文庫は嫌って、いつも大きなハードカバーの本を持ってくるあたりに彰の

学ぼうって本気がわかるじゃないか。

しかし、いつも答えられる問題ならいいぞ。

 いくら日本語って言ったってうっかりしているとよく分からない質問も来るんだから。


「あのさあ、ケイ。実は僕、今だに『したく』と『用意』と『準備』の違いがよく分からないんだよね。適当に

使ってるけど」


うっ、……悪い、それは『広辞苑』に聞いてくれ。



 めちゃくちゃウケたのは「教授に『分かりました』って言う意味で、『御意』って使ったら注意された」ってやつ

かな。確かに辞書をみると『ごもっとも』とか『目上の人に対し、云々』とだけ書かれている。

 今じゃ時代劇しか使わないだろ、それ。と言うか現代日本人はほとんど知らないって。 

俺マジでその場にいて教授の顔がみたかったよなー。



「ケイ、今日の講義は全部終わったの?」

「うーん。あと一つ。」

「そ、じゃあ、終わったらごはん食べに行こう」

 えー。どうもこいつと一緒にメシを食うとそのまま飲んじゃって終電のがして結果、彰のマンションに泊まっ

ちゃうんだな。どうしようかな。

 彰は俺の考えていることが分かったのか意地悪く笑って、

「いいじゃない、修学旅行しようよ」


 おーい! 誰かこいつにきちんと『修学旅行』本来の意味を教えてやってくれ。

 俺が教えたところでもう無理だと思う……。


番外編 おしまい♪
 

 

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2005/2/17 update

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